弓道を始めると、さまざまな専門用語や道具の名前に触れることになります。その中でも、「かけ(弽)」は弓道に欠かせない重要な道具の一つです。
「かけ」とは何か、そしてその漢字の正しい書き方や意味を知ることは、弓道の基本知識を深めるうえで非常に大切です。しかし、日常生活ではあまり目にしない漢字であり、正しく入力したり使ったりするのは少し難しく感じるかもしれません。
この記事では、弓道の「かけ」の漢字に焦点を当て、正しい書き方を詳しく解説します。
弓道の世界をより深く知るために、ぜひ最後までお読みください。
弓道の「かけ」の漢字は?
弓道で使用される「かけ」という言葉は、漢字で「弽」と書きます。この漢字は、弓道に特有のものであり、日常生活ではほとんど見かけることがありません。そのため、多くの人が初めてこの漢字を目にする際には、入力方法や正しい読み方に戸惑うことがあります。
実際に「弽」を日本語の通常の入力システムで変換するのは難しいことが多いです。日本語のキーボードで「かけ」と入力しても、「弽」という漢字が出てこないことがほとんどです。そのため、iPhoneなどの手書き入力機能や中国語入力の手書き変換機能を活用するのが一般的です。これらの方法であれば、画面に漢字を直接描き、そのまま「弽」を正確に入力することができます。
また、特定の弓道関連の辞書や専門書籍を参照して、漢字をコピーペーストすることも一つの手です。入力が難しいため、弓道の学習者や競技者にとっては、少し面倒な作業ではありますが、正確な表記を覚えることは大切です。なぜなら、弓道における「弽」は非常に重要な道具であり、その名称や表記に対する理解もまた、弓道の基本的な知識の一部だからです。
弓道の「かけ」とは?その役割を解説
弓道において「かけ(弽)」は、右手親指を保護するための鹿革製の手袋のことを指します。弓道で使用される弓は非常に強力であり、弦を引く際には相当な力が右手親指にかかります。この強い力を受け止めるために、「かけ」が存在します。
もし「かけ」を使用しなければ、弓を引いた際に親指にかかる力によって怪我をしてしまう可能性があります。特に、弓を引く動作は繰り返し行われるため、指への負担が蓄積し、痛みや炎症が生じることがあります。このため、「かけ」は弓道に欠かせない道具であり、初心者から上級者まで全ての弓道家が使用しています。
「かけ」にはいくつかの種類がありますが、一般的に三ツガケと四ツガケがよく知られています。三ツガケは親指、人差し指、中指の3本の指を覆い、四ツガケはさらに薬指まで覆います。自分の弓の強さや手の形状に合った「かけ」を選ぶことが、弓道を快適に行うための基本です。また、「かけ」は長く使い続けることで手に馴染み、道具としての性能もさらに向上します。
弽(かけ)の歴史と由来について
「かけ」の歴史は、日本の武士が弓術を使っていた時代にまで遡ります。当時、弓は戦場で重要な武器であり、その使用技術は戦いにおいて非常に重要なものでした。この中で、弓を効率的に引くために指を保護する道具として「かけ」が発展してきました。
特に、弓道で使用される「かけ」は、蒙古式の射法に基づいて発展しました。この射法では、弦を親指に掛けて弓を引くため、親指にかかる負担が大きく、これを保護するための道具が必要でした。時代と共に「かけ」は改良され、武士の時代から現代まで引き継がれています。
当時の「かけ」は、素材や製法が現在とは異なっていましたが、弓術の流派や射法の変化に応じて「かけ」も独自の進化を遂げてきました。今日使用されている三ツガケや四ツガケは、特に近世に発展したもので、より親指を保護し、力強く弓を引くために改良されています。
また、弓道以外でも、鷹狩などで「かけ」が使用されていました。こちらは弓道のものとは形が異なり、主に左手につけて使用されるものですが、「かけ」という名称は同じです。歴史を通じて、「かけ」は弓術や狩猟文化において重要な道具として使用され続けてきました。
弓道における「弽」と「弓懸」の違いとは
弓道では、「弽(かけ)」と「弓懸(ゆがけ)」という言葉が使われますが、実際には同じ道具を指しています。
「弽」は、古くから使われてきた漢字表記であり、特に歴史的な文献や古典的な弓道の資料などで見かけることがあります。一方、現代では「弓懸」という言葉が一般的に使われており、弓道の道具店や教科書などでは「弓懸」という表記が使われることが多いです。
しかし、どちらも右手親指を保護するための手袋であり、その機能や使い方に違いはありません。流派や地域によって使用する表現が異なることがありますが、基本的に弓道においては「弽」と「弓懸」は同義語として理解されるべきです。両方の表記を知っておくことで、文献を読む際に混乱せずに済むでしょう。
三ツガケ・四ツガケの種類と使い方
「三ツガケ」と「四ツガケ」は、弓道における「かけ」の主要な種類です。これらは、親指を中心にどの指まで覆うかによって異なります。
三ツガケは、親指・人差し指・中指の3本の指を覆う構造です。親指に弦を掛け、中指でその親指を支える形で弓を引きます。このため、三ツガケは初心者にとって使いやすいタイプとされています。特に、弓力がそこまで強くない初期段階では、三ツガケで十分に親指を保護でき、指の自由度も高いです。
一方、四ツガケは三ツガケに加え、薬指までを覆うタイプです。四ツガケは、より強い弓力に対応するために、指の保護範囲を広げて安定性を向上させます。このため、弓力が強い上級者や、特に安定した引き方を求める射手に適しています。
どちらを選ぶかは、自身の弓力や射法のスタイルに応じて決めるのが良いでしょう。また、どちらも正しく装着しなければ、弦をうまく保持できなかったり、手に負担がかかってしまったりするため、使い方の習得が大切です。
弓道の「かけ」の素材と選び方
「かけ」の素材は、主に鹿革が使用されます。鹿革は非常に柔軟でありながら、吸湿性や耐久性に優れているため、弓道のような高い強度が要求されるスポーツに最適です。
さらに、鹿革には「大唐」「中唐」「小唐」といったグレードが存在し、鹿の年齢に応じて品質が分かれています。若い鹿から採れる「小唐」や「チビ小唐」といった革は、特にきめが細かく柔らかいため、非常に高品質とされ、価格も高くなります。
「かけ」を選ぶ際には、自分の手の大きさや指の長さに合ったものを選ぶことが重要です。既製品の「かけ」も多く市販されていますが、長期間にわたって使う場合は、オーダーメイドで作られる「かけ」が理想的です。オーダーメイドのかけは、射手の手に完全にフィットし、より快適で正確な弓引きが可能になります。
ただし、オーダーメイドは非常に高価なため、初心者の場合は既製品を使い、慣れてきた段階で自分に合った「かけ」を見つけるのが良いでしょう。
弽(かけ)を長持ちさせる手入れ方法
「かけ」は、適切な手入れを行うことで長期間使用できる道具です。弓道では毎回の練習でかけを使うため、使用後の手入れが非常に重要になります。
まず、かけを使用した後は、必ず日陰で乾燥させることが基本です。特に夏場など、手に汗をかきやすい季節には、かけが湿気を含んでしまいます。湿気は革にとって大敵であり、放置すると革が劣化してしまいます。直射日光に当てて乾燥させると、逆に革が硬くなりひび割れを起こすこともあるため、必ず日陰で風通しの良い場所に干しましょう。
また、「下ガケ」を頻繁に交換することも大切です。下ガケは手汗を吸収し、直接かけに汚れや湿気が付くのを防ぐ役割を果たします。これをこまめに交換することで、かけ本体を清潔に保つことができ、長持ちさせることができます。
さらに、革製品用の保湿クリームを使うことで、かけの柔軟性を維持し、ひび割れを防ぐことができます。適切な手入れを行うことで、かけは一生ものの道具となり、長年にわたって使い続けることが可能です。
弓道での「弽」作法と正しい使い方
弓道には、かけの使用に関して厳格な作法が存在します。これらの作法は、単に見た目の問題だけでなく、弓道の精神性や安全性に関わる重要な要素です。
まず、かけを装着する際には、必ず正座をして行います。弓を引く前に正座をしてかけを挿すことが、弓道の基本的な作法となっています。また、弓射を終えた後や、弓道以外の作業を行う際には、必ずかけを外すことが求められます。かけをつけたままの状態では、手首や親指の動きが制限されるため、日常動作には向きません。
弓を引く際は、かけを正しく挿し、親指にしっかりと弦を掛けて保持します。弦枕という部分に弦を掛け、中指または薬指でその弦を支え、手首に適度なひねりを加えながら弓を引きます。また、かけ紐で手首を締めることで、手首と親指がしっかりと安定し、正しい弓射が可能になります。
正しい作法を守ることで、安全かつ美しい弓射が行えるようになります。また、かけの扱い方は射の成功に直結するため、基本的な使い方をしっかりと学ぶことが重要です。
弓道用語「弽」に関連する豆知識
「弽(かけ)」は、弓道に深く関わる道具であり、これに関連する言葉や慣用句もいくつか存在します。例えば、「かけがえのない」という言葉は、弓道のかけに由来しているとされています。
弓道家にとって、自分にぴったり合った「かけ」は非常に大切であり、替えがきかないほど重要なものです。市販品であっても、手に馴染んだ「かけ」は他に代えがたいものとなるため、このことから「かけがえのない」という表現が使われるようになったと言われています。
また、「手の内を明かす」という言葉も、弓道に由来する表現です。手の内とは、弓を正確に引くための技術や手の使い方を指し、これを相手に教えることは、自分の重要な技術を公開することになります。このことから、秘密を明かすという意味で「手の内を明かす」という慣用句が生まれました。
弓道に関連する言葉は、日常生活でもよく使われているため、言葉の背景を知るとより深く理解できるようになります。
まとめ
弓道における「かけ(弽)」は、右手親指を保護するための重要な道具です。漢字では「弽」と書きますが、現代では「弓懸」とも呼ばれています。
かけには、三ツガケや四ツガケなどの種類があり、それぞれの弓力や手の大きさに応じて選ばれるべきです。また、かけの素材は主に鹿革が使われ、手入れや保管方法次第で、長く使用することができます。
さらに、かけは弓道の基本的な作法に従って正しく使用されることが求められます。正しい使い方や手入れを行うことで、一生使い続けることができる道具です。
弓道を始める際には、自分に合ったかけを選び、大切に扱うことが何よりも重要です。